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自社のジェンダーギャップ指数は?(ほんのひとこと)

●低迷するジェンダーギャップ指数

 世界各国の男女平等の度合を数値化した「ジェンダー・ギャップ指数」。7月13日、世界経済フォーラム(WEF)が2022年度報告書を発表しました。「経済」「教育」「健康」「政治」の4つのデータから作成され、0が完全不平等、1が完全平等を示すこの指数で、日本の指数はたったの0.65。調査対象となった世界146カ国中116位で、先進国中最下位でした。全く恥ずかしいことながら、我と我が身を見直してみると、さもありなんと思います。



●イベント「学校では教えてくれない性の話」

 今年の7月から9月にかけて「学校では教えてくれない性の話」と題して、田原町のReadin’ Writin’ BOOKSTOREで3回にわたってトークイベントを行いました。講師は中学校の保健体育教員の樋上典子さん。樋上さんは都立養護学校(現特別支援学校)で9年、足立区内の中学校で30年、保健体育科教員として勤務してきました。自民党と統一教会との癒着から最近再び話題にのぼるようになった「七生養護学校事件」(1997)でバッシングを受けたその当事者です。


 樋上さんは現在も、大学の研究者らとプログラムを組んで包括的な性教育実践を行っています。今回のイベントでは「性教育を人権教育」と位置付け、「科学的にからだのしくみを学ぶこと」「力強く生きる自信をつけること」、そしてそこから「他者を思いやり、尊重すること」を考える講義をしていただきました(後日単行本化予定)。


 特に印象深かったのは第1回目の「日本の性教育と多様な性」。「自認する性」「身体の性」「表現する性」「性的指向」の4つの性の在り方と、そうした多様な性のあり方が性教育の前提とされてこなかった、日本の性教育の現状等についてお話をうかがいました。


 今年で出版業界に入って13年目になりますが、その当時と比べると#Me too運動など性加害を訴える運動がニュースとして取り上げられることが多くなりましたし、書店でも「性の多様性」をテーマにした本を目にする機会が増えました。けれど私自身はあまり「身近な問題」としてこれを考える機会がありませんでした。それだけに今回の3回の講座はとても新鮮でした。



●ハラスメントは、本当にない?

 非常に書きづらいのですが、私はごく最近まで、自分はセクシャルハラスメントとは無縁の人間だと思ってきました。宴席で際どい冗談に肝を冷やしたことくらいはあるものの、特段不愉快な思いをさせられたことはありませんでした(元々鈍感な方だということはありますが)。


 けれども一連の講義を聞いて来し方を振り返ってみると、「あの時のあれは、ハラスメントだったんじゃないか」と思い当たることが幾つかあります。自分が受けた発言や行為もですが、より強く思い返されるのは、むしろ自分の発言や態度に対してです。


 たとえば先日、若い社員からこんな問題提起がありました。


 数ヶ月前、私と取引先との打合せに出、そのあとの食事にも同席したことがありました。そのとき、相手からセクハラ紛いのことを言われたそうなのです。そのように指摘されるまで、私自身はそのことに気づいていませんでした。問題は、セクハラ発言そのものよりも、社員がセクハラを受けているのに私が気づきもせず談笑していたことで、出版社の代表者として、晴山これで良いのだろうか?というのがその話の主眼でした。


 もし当事者を加害者と被害者で二分するならば、私は加害者で、社員は被害者ということになります。流石に話を切り出されたときは動揺しましたが、今は、こういう話が出てよかったと思っています。特にセクハラに関していえば、世代間での認識の差というものも大きい。無自覚に加害者になってしまい、そのことに気づかないまま過ごしてしまうこともあり得ます。特に弊社のような少人数のチームにとっては、チーム内での信頼関係は成果を出していくための大前提ですから、それを揺るがす問題の芽があれば、早期に摘まなければなりません。


 またこのことで、小さな違和感や不快感について、問題を提起していいのだ(むしろ言った方がいい)、という認識が、チーム内で共有されるようになりました。



●いい会社とは?

 いい会社とは、何でしょう。異なる世代の、皆それぞれに違う人間が同じ環境で働くのですから、すれ違いは必ず起こります。嫌な思いをすることも、させてしまうこともあるでしょう。だからせめて、誰かが「我慢する」「黙る」環境は作らないようにしたい。誰でも問題を提起でき、話を聞くこともできる環境、を作っておかなくてはいけません。


 だとすると、「自分の周りにはハラスメントはない」という思い込みは、非常に危険です。ぎくっとした方、自分の先入観が、無意識のうちに誰かに沈黙を強いている可能性はありませんか? 逆に、無意識のうちに小さな違和感を飲み込んではいませんか?


 「超快適」とは言わないまでも、せめて皆が「不快でない環境」を作り維持していくためには、対話しつつ、常に自分の感覚をアップデートしていくことが必要だと思います。旧態依然とした性教育の現状、法制化されない選択的夫婦別姓等、国の政策に対して言いたいことは腐るほどあります。出版物を通じてそうした発信を続けつつ、自らを顧みて、私たちの環境だけでもジャンダーギャップ指数「1」を目指したいと思っています。


 樋上典子先生の『学校では教えてくれない性の話』は、来春刊行予定ですので、こちらはぜひ、ご期待のほど。



出版協理事 晴山生菜(皓星社


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