「オンライン商談会やるってどうだろう?」と、インプレスの湯浅創さん(当時はTAC出版)が2020年4月1日にSNS上で発言してから、早いもので一年が経つ。コロナで書店訪問が難しくなった中での発言だった。この一言をきっかけに、私を実行委員長として有志の版元で立ち上げた「書店向けWeb商談会」は、今年の4月5日から3回目の開催を迎える。これまでの開催を通じて、忙しい書店員さんが自主的に版元との商談予約を入れるには「上長の理解や指示が必要」との声を聞いていた。そのため今回は、事前に書店・取次店への説明会を行うことにした。
以前から一版元の代表として、全国の書店を行脚したいという想いはあったが、日々の社長業や、自社の営業担当者への遠慮もあり、果たせなかった。しかし今回は、実行委員長という立場もあり、堂々と各書店法人へ説明会を行なえる。そこで実行委員のみなさんに「何度でも書店さんへご説明差し上げますので、うまく私を利用してください」と伝えたところ、今年の2月から3月にかけて毎日のように説明会の予定が入り、書店・取次店合わせて実に30法人へ「説明会マラソン」を行うこととなった。委員のみなさんが各自のコネをフルに活用された結果であり、当社だけではここまでできない。また、福井の書店さんとお会いした直後に徳島の書店さんとお会いするという日があったが、オンラインでなければ決してできない。まさかこんなバーチャルな形で、全国行脚することになるとは思わなかったが、非常に楽しく、勉強させて頂いている。
さて実際に説明会を実施してみると、各法人、反応は千差万別。地域も違えば規模も違う。経営方針や業績も違う。パソコンなどインフラの整備状況も異なる。したがって一概には言えないが、いくつか見えてきたこともある。
まず、そもそも商談会の存在を知らない、または聞いたことがあっても内容を全く知らない、という方がほとんどだった。説明会を行った意義はそれだけで十分にあった。これまで業界紙で多々取り上げられてきたが、それでも浸透するには足りず、こうして個別にお話をしていく必要があることを思い知った(「話を聞かせてよ」という書店さんは、遠慮なくお声がけください)。
次に商談会への期待度は、東京に近い書店ほど低く、地方の書店ほど高い。ある関東の書店では、コロナで地方出張できない版元営業が以前よりも頻繁に訪れるようになったという。そのため商談会の必要性を感じないどころか「(営業の人は)やることがないからといって、時間つぶしにこないでください(笑)」。一方、北陸の書店では「書店員も新人からベテランまでいるが、段階に応じ相談相手が見つかるのが素晴らしい。リアルでは絶対にできない。年中やってほしい」とのありがたい声。われわれ版元営業の存在意義の一つに「店舗に応じた棚提案をする」ということがあるが、営業の人数が少なければ全国にはなかなか足を運べない。こうした地域ごとの情報格差を埋めることこそ、Web商談の役割である。
そして地域に関わらず評判がよいのが「合同フェア注文書」だ。元はといえば書店さんから「一社だけではなく、いろんな版元のおススメ書籍をまとめて注文できる注文書が欲しい」との声から生まれたもので、このアイデア自体は目新しいものではない。しかしこれまでは版元のどこか一社が各社から書誌情報を集め、紙のチラシにレイアウトし、FAXなどで受けた注文を版元各社に振り分けるという地味に手間のかかるものであった。これを全てWeb上で行うというのが新しい。例えば今回「おとなもこどももSDGsフェア」というテーマで数十社からのおススメ書籍を合同注文書として提案するのだが、まず各社の書誌データは入稿後、Web上で自動的に配置されるためレイアウトの手間がいらない。書店からの注文もWeb上で行い、各版元へ自動的に注文が飛ぶ(これらは株式会社カランタの提供する「一冊!取引所」の機能を活用している)。紙でやるにはどこか一社のボランティアがないと成り立たない仕組みが、Web上で自動化されることによってこれが不要となり、ちょっとしたフェアのアイデアも簡単に実現できるようになった。こうした書店・版元が共同で知恵を出し合って解決していく過程も含め、書店さんからは「まるで出版知恵袋」(神奈川)、「神がかっている」(徳島)といったお声をいただいている。この「合同フェア注文書」は商談を経ずとも利用できる点も、利用者のすそ野を広げることになりそうだ。
紙幅の都合上紹介しきれないが、このほか「書店チェーン別・版元合同説明会」や、「本屋大賞発表の夜にみんなでワイワイガヤガヤする会」など、化学反応の産物が日々生まれている。出版営業のDXは止まらない。本商談会への書店さんの参加は無料です。学びや仕入につながるイベントも盛りだくさんで楽しいですよ。ぜひ「web-shodankai」で検索してHPをのぞいてみてください。
「書店向けWeb商談会」公式HP:
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出版協理事 三芳寛要(パイインターナショナル)
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