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新型コロナウイルス禍(ほんのひとこと)

 日本に在住・滞在するみなさんが、無事過ごされることをお祈り致します。加えて、出版協会員各社のみなさん、高齢の方もおられますので、くれぐれも万全の対策をおとり下さい。


 東京オリンピックの延期も3月24日に発表されました。1年以内に開催という話ではあるようですが、詳細は不明です。オリンピックの延期が決まったことで、感染の実態が明らかになればと思います。現状、誰しもが、政府・地方公共団体の発表に感染者情報などに不信を抱いていると思われるからです。


 今後、相当な経済的影響が出ることは、間違いないと思います。出版界も、どのような、そしてどの程度の影響が出てくるかなど、分かりませんが、規模の小さい版元が多い会員各社への影響は大きいかと思います。すでにご存知のことかと思いますが、中小企業向けのコロナ対策の制度融資が実施されていますので、ご確認下さい。


 首都閉鎖、という言葉が都知事から出てくるようになっています。緊急事態、非常事態ということで、あり得るかも知れません。人々の自由・人権を一時的に凍結することになります。もちろん人命第一にされることなので、致し方ないと思います。が、こうした手段が、別様に使われることだけは阻止しなければなりません。言わずもがなかも知れませんが。


 欧米各国は、ロックダウンに対して、すべての国民への相当な経済的支援を行うことを決めています。日本では、どうなるのでしょうか。非常事態に備えていなかったのが悪い、とかいう自己責任論で、やりすごそうというのでしょうか。あるいは、経済的支援を行わないために、自主規制のみにとどめるのでしょうか?


 すでに、イベントが中止となり関係者が悲鳴をあげていても、具体的な動きが何も出てきていません。広い意味の文化に対して、いわゆる先進国でこれほど冷淡な国はないのではないでしょうか。「日本いいね!」以外は、文化でないと思っているのでしょうか。


 こうした事態に対してメディアの役割は大きいと思うのですが、近年大手メディアはあまり当てにはできないと思わざるをえません。「空気を読まない」ことにかけてはピカ一の会員社のみなさんの奮闘を期待しています。



 さて、業界関係ですが、これまで打診のなかった幾つかの版元に、書店への送品の運賃負担として1冊5円をお願いしたいと、取次から要請がありました。これまで数社の会員社にも、正味の切り下げによって運賃負担分を捻出するという話が来ていましたが、これは多くの版元に拒否され、頓挫したと思われます。その代案として、今回の要請になったと思われます。比較的規模の大きい版元だけに絞っての要請なのか、すべての版元に要請するのかは、まだ分かりません(上位300社にはすでに来ているとの情報もあります)。


 すべての版元にということであれば、今後は仕入窓口で、要請されることがあると予想されます(いちいち版元をまわっていられないのでしょう)。その際は、まずは、話だけを聞く、ということが必要だと思います。


 一律、1冊5円を全ての版元に、というと平等なようにも思えますが、そもそも、各社の取引条件が違い、とりわけ、版元の規模、設立時期などにより、正味格差、支払い保留、支払い保留の期間、歩戻し等々、さまざまな不平等があります。


 これらを無視して、一律というのは、あり得ないと思います。


 支払い保留は、その期間がすぎれば保留分が入ってくるから同じだ、とされる社もあるかも知れませんが、どうでしょうか。売上には、山と谷がどうしても出てきます。新刊点数が多い月があったり、はたまた出ない月があったり、書評に取り上げられ売上があがったり、夏枯れがあったり、連休枯れがあったりで。その月の売上が良くても、支払い保留でもっていかれ、保留精算が谷の月であれば、入金額は相殺されてしまいます。


 正味格差は、1冊5円どころの差額ではありません。本体1000円の本で、たとえば68%と69%では、10円の格差があるわけです。


 もちろん、業界全体の問題として、輸送費の問題が深刻な課題であることは承知していますし、協力することにやぶさかではありません。しかし、これまで同様に現状を放置したままでは、おいそれとは協力できないと考えます。


 会員各社に、今後取次から要請があった場合は、出版協にお知らせ下さい。



出版協理事 石田俊二(三元社

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